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78)二人のエルネスト

 皆さん、ベレー帽にひげ面の精悍な顔つきの男性の肖像を印刷したTシャツの若者に街で出くわした事はありませんか?その人物は2017年で没後50年になったエルネスト・チェ・ゲバラです。
2017年10月に封切りされた映画「エルネスト」は、そのゲパラと共に南米ボリビアで、軍事政権を倒す革命軍として闘った日系ボリビア人二世、フレディ・マエムラの短い一生を描いています。

 フレディは幼少時から医師を目指しており、奨学金を得てキューパの国立ハバナ大学医学部に入学します。入学直後にキューパ危機を体験し、国際政治に目覚めます。その頃、チェ・ゲパラがハバナ大学を視察に訪れ、フレディと言葉を交わします。フレディの卒業直前に母国ボリビアの軍事クーデターが勃発し、母国が軍事政権の圧政に蹂躙されるのです。フレディは、母国で軍事政権と闘うことが自分の義務と考え、一面識のあるチェに面談を求め、紆余曲折の後に革命軍の訓練を受け、ボリビアに革命軍として赴くのです。革命軍戦士としての、チェから与えられたコードネームが自らの名をとったエルネスト・メディコ(メディコは医師・医療の意)でした。しかし、圧倒的な力の軍事政権軍の前に、フレディもチェも1967年にボリビアの地で戦死してしまいます。

 さて、ここからが、本コラム「異文化コミュニケーション」の本来の伝えたいところです。フレディ・マエムラを演じたオダギリ・ジョーは全編を通じてスペイン語で演じているのです。オダギリは英語には堪能で、これまでいくつかの作品で英語で演じていますが、スペイン語は、特に学んだことはなく、撮影前のスペイン語特訓と台詞の丸覚えでこなしたそうです。スペイン語には無知な私ですが、映画を観る限り、 オダギリの話すスペイン語はかなりこなれた自然なものでした。
  私のこのシリーズの第46回「日系北米二世の言語生活」で日系二世カナダ人を演ずる日本人俳優は映画「バンクーバーの朝日」において日本語で演技しましが、これからこの種の映画を制作する時は、日本人俳優を使う時も、少々英語がまずくとも英語でしゃべって字幕を付けるほうが、作品的および歴史的にみてよりよいものになると指摘しました。今回の作品「エルネスト」が期せずして、この指摘を実証してくれたように思え、その意味でも観劇後の感激が大きかったです。

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木戸友幸
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