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99)異文化と金儲け

 なんかちょっと引いてしまいそうな今回のタイトルですが、異文化、例えば外国語を勉強して、それを金儲けにつなげようという趣旨ではないのです。でも間接的には、異文化に興味を持ちその興味を長く保ち続けると、金銭的に少しいい思いをすることもできるという私自身の経験談です。

 先ずはエピソード1から。
医学部に入学した時から、米国への臨床留学を目指していたということは、このブログでも何度か書いたと思います。そのために授業を終えてからの週3回の夜学の英語学校に通い、在学中に留学生試験に合格したことも書きました。卒業後は、米国臨床留学者が一番多く在籍していた母校の第3内科で研修を受けました。第3内科はさすがに勉強熱心な医師が多く、週1回、医局のジャーナルクラブ(最新の医学論文を読んで討論する会)以外に自主的なジャーナルクラブが週1でありました。その時のテキストは、世界的に最上位にランクされる内科雑誌のNew England Journal of Medicine ( NEJM )でした。この雑誌は週刊誌で、当時でも年間購読料は2万円くらいはしたと思います。ちなみに2019年時点では38,500円です。研修医2年目になった時に、この雑誌に少し変わった通知が掲載されました。当時の換算で7万円余りを一時払いすると、life subscription(生涯購読)ができるというものでした。 40数年前の7万円は確かに今よりはかなり価値は高かったですが、研修医でも週末の当直アルバイトなどの臨時収入があったので、それほど法外な値段ではありませんでした。迷うことなく、その額を送金して生涯購読を始めました。この時、自主的ジャーナルクラブの仲間も、その他の勉強熱心な先輩医師達もこの通知は皆読んでおり、このことはちょっとした事件になっていました。しかし、この生涯購買の申込数は世界中で驚くほど少なかったそうです。その理由は、こんな破格の安値で生涯購買を宣伝するのは、NEJMが経営困難に陥っており、その一時しのぎで暴挙に出たと勘ぐったことによるものだろうと言われています。確かにそういう要素はあったのかも知れませんが、その後40数年間NEJMは現在まで、律儀に毎週届けられています。3年間ブルックリンで研修医生活を送った時も、2年半のパリで開業生活をしていた時も住所変更するだけでNEJMは毎週届けられました。ですから、卒業2年目の1978年から2019年までの41年間、無料で届けられていることになります。年間3万円とすると123万円(その額マイナス7万円?)の得をしたことになります。そして、NEJMは現在でも、世界で最大級の評価を受けている医学雑誌であり続けています。

 次にエピソード2です。
開業医時代の2006年からヨーロッパの某航空会社の顧問医を務めることになりました。仕事は機長や客室乗務員の日本での体調管理をするのが仕事です。基本的には若くて健康な集団ですから、連絡があるのは月1回あるかないかです。ですから、診療による報酬は微々たるものです。その埋め合わせのためか、年一回カップルで日本―ヨーロッパのビジネスクラスでの往復チケットが支給されることが契約に含まれているのです。残念ながら開業医時代は、ゆっくりヨーロッパ旅行をする休暇が取れなかったので、この特権を行使することはありませんでした。2016年に開業を辞め、特養の常勤を中心に嘱託産業医などのかなり自由の利く仕事環境になり、2018年に一週間、2019年には10日間の休暇をとり、妻とともにヨーロッパ旅行をしました。ヨーロッパはまだまだいくらでも訪ねたい場所があるので、あと10年くらいは毎年この特権を行使していきたいと思っています。そのためには、自らの健康管理もしっかりして顧問医を続けないといけません。ですから、英語とフランス語の研鑚(というか趣味として)も日々続けています。

 というわけで、異文化に興味を持ち続け、できれば複数の外国語の研鑚を長年継続していくと、お得なオファーやちょっとした特権のある求人の口が提供されることが多いのです。もちろん、外国語だけの資格では、そのチャンスは少ないので、何か専門性のあるプロフェッションを持つことが、ほぼ必須の条件ではありますが。

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木戸友幸
mail:kidot@momo.so-net.ne.jp