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94)サーとマームの効用

 イエッサー(Yes, sir.)イエス、マーム(Yes, ma’am. )は、前者は男性の上司や年配者に、後者は女性のそれらに対する返答に使われてきました。しかし、昨今、この返答は特に米国では軍隊でくらいしか日常的には使われません。会社でも就職した初日くらいはサーやマームを使うかも知れませんが、ほぼ例外なく上司の方からファースト・ネームで呼んでくれと言われます。昨今と言いましたが、私が40年前に研修医をしていたブルックリンの病院でも、科長に対してもファースト・ネームで呼んでいました。さすがに、かなり年上だった教授にはDr.・・・とファミリー・ネームの方で呼んでいました。ということで、当時、私自身も米国ではサーやマームを付ける必要はまったくないのだと思い込んでいました。ある時、駐車場に駐めておいた車の、取り替えたばかりのタイヤが盗まれたので、(ブルックリンでは珍しいことではありません。)警察署に報告に行きました。大男の白人警官が対応してくれました。向こうが質問をして私が、イエス、ノーで返答するのですが、警官がみるみるうちに不機嫌になっていきます。周りを見渡し耳を凝らすと、警官に対する返答は全てイエッサーかノーサーではありませんか。そうか、サーを付けないとこの種の職業人の機嫌を損ねてしまうんだ。そのことを気づいてイエス、ノーにサーを加えると、たちどころに警官の機嫌が治りました。その後、警官に対する呼びかけも、ポリスは厳禁で、オフィサーということも覚えました。このことがあってから、米国だけでなく、2年半過ごしたフランスでも、旅行で訪ねた西洋諸国でも、警官を初めとする制服人種に対しては、この時代がかった敬語話法を使う方が何かと無難だという世間的な知恵を付けました。

 2019年の夏に、三男がハワイで結婚式を挙げることになり、長男と二男も出席することになりました。結婚式を終えてからは、各々が別行動でハワイ観光を楽しんだのですが、未だ独身の二男は我々夫婦と行動を共にすることになりました。彼は当時、研修医だったのですが、旅行好きで医師になってからは海外旅行も経験し、学生時代には興味を示さなかった英語にも、旅行での必要上興味を示すようになっていました。そこで、二男とハワイ旅行中の日本語の分からないアメリカ人との対応はすべて彼に任すことにしました。一つ一つの対応の直後に、その添削を私がするという実地形式の英語塾です。もちろん、空港のガードマンなどの制服組への呼びかけはExcuse me, sir. あるいは ma’m です。これは、指導前後で相手の対応を実体験させました。一語加えるだけで、制服組の対応が迅速、丁寧になるのはちょっとびっくりです。もちろん、これは便宜上のことで、こういう言い方をすることで、卑屈になる必要はまったくないこともちゃんと教えました。二男がこれをきっかけに、英語への興味を持ち続けてくれることを願っています。皆さんも、海外での生活の知恵として、頭の片隅に入れておいてください。

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木戸友幸
mail:kidot@momo.so-net.ne.jp