9) 欧米ひとくくりに対する異論
1995年からパリに滞在し医業に携わるという生活を2年半続けました。その経緯は、当サイトのパリの項でご覧ください。1980年台の3年間のアメリカ生活からは少し離れてはいますが、ヨーロッパでの生活も体験したことになります。その米と欧の二つの文化圏の体験からの感想を述べてみます。
私は若い時から語学好きで、大阪医大に入学してから、医学の勉強に付け加え、最初は土佐堀のYMCA英語学校で英語を勉強しました。それが一段落した3年生からは、江坂でその当時新規開設された大阪日仏学院で、フランス語を勉強しました。どちらもネイティブの教師が文化的背景も含めた授業をしてくれる非常に質の高い内容でした。その体験からアメリカとフランスの文化がかなり違うものであることに何となく気付いていました。しかし、毎日のテレビ報道や、新聞では、何かと言うと「欧米では・・・」というヨーロッパ、アメリカをひとくくりで表されることが多く、そのことに以前から違和感を感じていました。
アメリカはハッキリ言って巨大な田舎です。普通のアメリカ人は、世界中で英語(米語?)が通じると思っており、世界の政治情勢にはあまり関心はありません。国レベルでも、歴史的に国際政治のセンスは悪く、ヨーロッパの列強からは馬鹿にされ続けてきました。しかし、金持ち喧嘩せずで、個々のアメリカ人はフレンドリーでお人好しです。日本でのアメリカの印象はこのアメリカ人の長所のみが強調されて、短所の方はほとんど知られていないようです。
フランスは政治的には、日本より遥かに小さい経済規模にも関わらず、アメリカに勝るとも劣らない国際的な影響力を未だに保っています。フランス国民は議論好きで、理屈っぽく、もちろん政治談義も大好きです。しかし他人、特に初対面の人に対しては少々冷たい印象を与えるようです。フランス中華思想の影響か、外国語に関してはアメリカ人同様あまり関心はありません。しかし、フランス以外のヨーロッパ諸国では、個人あるいは国レベルの必要性にかられ、複数の外国語をあやつれる人材はいくらでも見つかります。ですから、アメリカとヨーロッパは異文化圏というのが正しいのです。
近年、日本ではアジア諸国への関心が高まり、アジア諸国がそれぞれ異文化圏であることは現在常識化してきています。これと同じく、欧米をひとくくりにする考え方をそろそろ改める時期だと思います。
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