86)ボーイ(ガール)フレンド
「彼は恋人じゃありません。単なるボーイフレンドです。」といった台詞が日本の小説や映画でよくあります。日本では、単なる友人の意味でのフレンドと、それよりもう少し関係の深まったボーイ(ガール)フレンド(以下BF,GF)の境目がかなり曖昧なように思います。むしろ、上記の台詞では、「彼は肉体的関係のある恋人ではなく、プラトニックな関係の単なるボーイフレンドです。」という意味合いで使われ、関係性の薄さを強調するために使われているように思います。
いきなり随分理屈っぽい話になってすみません。日本での外来語の使われ方は、結構本国での使われ方から違っていることが多いので、それをとやかく言うつもりはないのです。しかし、BF,GFは和製英語ではなく、海外へ出てもそのままで、使うことの多い単語です。それも男女の関係を表す言葉なので、双方で定義が異なっていると、その誤解が元で大きな事件につながる可能性もあります。そこで、この日本での使われ方から生じたいくつかの事件を私のこれまでの海外生活からご紹介したいと思います。
まず最初に、英語国でのBF,GFの意味から始めます。これは、むしろ日本での恋人の意味で使われます。すなわち、単なる友人ではなくて、多くは性的な関係を含め、単なる友人よりも深い付き合いをしている人という意味です。英語国だけでなく、少なくとも英語で不自由なく情報交換の可能な外国人(恐らく日本人も)もそのような認識でいると思われます。
第一話は、私が医大の5年生の夏休みにフランスのグルノーブル大学での1ヶ月間のフランス語夏期講習に参加したときのものです。私は中級クラスに入ることができ、そこには複数のベネズエラ人政府派遣留学生がクラスメイトに居ました。ある時、初級クラスの日本人女性から相談を受けました。彼女は30代前半の独身女性で、同じクラスのベネズエラ人男性と付き合い始めたのですが、彼女はボーイフレンド・ガールフレンドの間柄でいましょうねと言っているのに、彼の言動がエスカレートしてくるという内容でした。彼らは、フランス語は初級レベルで、英語で会話していたのです。私のクラスのベネズエラ人コネクションを使い調べると、案の定、彼はBF,GFの関係というのを、純粋に英語風に解釈しており、結婚まで考えているとのことでした。
第二話は、40代半ばでパリで主に在住日本人を相手に診療していた時のことです。風邪などのために来院した時のついでの相談で、付き合っているフランス人男性との相談を多く受けました。ほとんどが女性からの相談で、日本男子として少し残念なのですが、フランス人女性と付き合っている日本人男性からの相談は皆無でした。その殆どが、フランスに来たばかりで、フランス語が覚束なく、彼氏とは英語で会話しているという女性からの相談でし
た。判で押したように、「最初はBF,GFの関係からと言ったのですけど・・・。」フランス人男性は、アングロ・サクソンの男性の100倍ほど恋愛に対する情熱があるので、そのまま同棲ということになります。そうなってから、その男性に稼ぎがないことが判明します。そこで、彼女は「あの時、BF,GFの関係からと言ったのに。」すると彼は「あの時、君がBF,GFの関係でいいと言ったから。」ということで、破局に陥るというパターンです。
私の3年間のニューヨークはブルックリンの話が抜けていると言われそうですね。ブルックリンでは、同僚の研修医にしろ、患者さんにしろ、こと恋愛に関しては白人よりアフリカン・アメリカンのほうが日本人にとって圧倒的に興味深い逸話や習慣を持っていました。実は彼ら(彼女ら)にとって、男性、女性、未婚、既婚を問わず、恋人、BF,GFの区別なんて糞食らえ!といった感じなのです。ブルックリンのアフリカン・アメリカンの男女の付き合いの第一歩は、夕食を共にするデートから始まります。男女のどちらから誘おうと夕食を共にするデートでは、夕食後、共に一夜を過ごすというのが常識らしいのです。ですから、ここで真面目に語った議論は、ブルックリンの彼ら(彼女ら)にとっては小学生のお遊戯みたいに見えると思います。
今回の教訓:海外で恋する時は、英語の本来の意味を確かめよう!
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