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74)政治の話題は御法度?

 2016年の頃の話です。この頃はインバウンド外国人観光客の数が急速に増加してきた時期で、関西では特に中国を筆頭にアジアからの観光客が、目立っていました。ある時、阪神梅田駅から神戸の自宅に戻るための切符を買おうとすると、アジア系の女性のバックパッカーが券売機の使い方が分からないらしく、困った顔をしていました。英語で説明してあげると、非常に流暢な英語が返ってきて、無事切符が買えて喜んでもらえました。たまたま行き先が同方向だったので、同じ車両に乗り込み雑談することができました。まず、どうしてそんなに英語が上手なのかを尋ねると、中国の大学で英語を専攻したからだということでした。日本でも、英文学科や英語学科の卒業生は多くいますが、これほど英語が上手な人にはあまり出くわしたことはありません。

 中国の大学教育は、少なくとも英語に関しては侮れないものがあるようです。それから、日本旅行の印象などを聴かせてもらっていると、話題が関西の鉄道の料金に移っていきました。彼女は、日本の運賃は非常にリーゾナブルだと答えたうえで、特急などに乗ると特別料金がいるのかと質問しました。私は、すくなくとも関西一円の50キロ程度の距離なら、私鉄もJRも特別料金は不要で料金は一緒だと答え、この面では日本は中国よりよほど共産主義的だと言い添えました。すると、それまで愛想良く会話していた彼女の表情が突然硬くなり、「I don’t want to talk about anything political.」といってこの話題を一方的に打ち切ってきました。

 報道では、中国本国では表現の自由というものは無く、共産主義に反する主張に対しては重い罰則が科せられると言われています。たしかに、民主化を目指す活動家なら、四六時中、自分の言動に注意していないと大変なことになるのでしょう。しかし、普通そうに見える中国人が日本を観光旅行中の電車の中での会話でこの過敏反応です。改めて中国の現政権のかたくなさを実体験しました。皆さんも、中国人旅行者と会話を交わす機会があれば、ほんの少し政治的な話題を持ちかけ、相手の反応をみるといろいろな意味で、面白いですよ。もちろん、日本は民主的国家ですから、そうしたからといって、こちらが何の被害を被ることはありませんからご心配なく。

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木戸友幸
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