57)汚いフランス語の習得法
2015年のゴールデンウィークに、「パリ警視庁:未成年保護部隊」(原題Polisse;本来の綴りはPoliceですが、意味がある造語なのです。注を参照。)というフランス映画をDVDで観ました。これは劇場公開されていない映画なので、日本ではあまり知られていません。しかしこの作品は第64回カンヌ国際映画祭審査員賞をとった知る人ぞ知るの映画らしいのです。
この部隊は実在するもので、監督はこの部隊と数週間行動を共にして入念に取材した後にシナリオを書いたということです。映画は個々の事件をドキュメンタリー風に継ぎ合わせたといった作風です。事件の大半が、ペドフィリーと呼ばれる幼児性愛絡みなのですが、それこそ、活字にできないようなフランス語単語が飛び交います。容疑者のあまりな言動に、尋問中の刑事が、激高する場面の台詞も、かなりの迫力があります。また、日頃、かなり異常な性愛志向者を相手しておりストレス過剰のためか、このチームのほぼ全員が、自らの家族生活、結婚(あるいは同棲)生活に問題を抱えています。彼らの個人的な男女間の言い争いの場面もかなりあるのですが、その台詞も教科書では学べないフランス語です。
フランス人は男女に関係なく本当におしゃべりで、カフェで何時間でも喋り続けるのですが、聞き耳を立ててみると、まったくたわいのないことが多く、今度の休みに海へ行くか山へ行くかを延々2時間かけて喋っていたりもします。この種の雑談は、何のためにもなりません。しかし、たまに金銭がらみや別れ話の口論に出くわすことがありましたが、この時の悪口雑言は、一つの文化といっていいほど見事なのです。残念ながら、こんなチャンスに巡り会うことはめったにありません。
車を運転していても、気に食わない運転をする車に対しては、女性でも平気でウインドウを開けて罵声を浴びせます。50代くらいの時のカトリーヌドヌーブが車を運転中、急に車線変更した車の運転者に「Salop!(くず野郎!)」と怒鳴ったのを聞いたことがあります。もちろん映画の中でのことですが。あんな上品そうな美女がこういう罵声を放つと、かえって色気があります。ドヌーブだからかも知れませんが。
汚いののしり言葉も、ある意味その国の文化の一つです。我々外国人が無理して使う必要はありませんが、理解するにこしたことはありません。そのための教科書は、やはり映画が一番いいようです。 注:peau(肌)lisse(柔らかい)ということで、 フランス語でpeau lisseとは「柔肌」という意味です。発音はpoliceと全く同じです。しかし、幼児性愛者にとって、peau lisseは性的対象の幼児の柔肌を意味します。
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