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56)注文の多い腰痛患者

 2015年の初夏の午前の診察中のことです。受付からの電話の転送に出ると、フランス人の男性旅行者からの腰痛の訴えでした。すぐ診て欲しいとの強い要望で、午前の一番遅い時間を指定すると、フランス人には珍しく、時間通りに来院してくれました。

 以前から腰痛はあったのだが、旅行中の歩き過ぎと緊張感から、腰痛が悪化したと言います。旅行はあと数週間ということだったので、鎮痛剤と筋肉の緊張をほぐす薬を処方しましょうと提案すると、薬は嫌だと言うのです。できれば、マッサージや指圧などの理学療法をしてくれる整形外科を紹介して欲しいということでした。フランス人は自己主張が強く、私のフランス語能力では彼を説得することは難しいと判断し、以前フランス人の肩の脱臼を、夜間の救急であるにも関わらず気持ちよく診断、治療してくれた、大阪市内にある整形外科がメインの老舗私立病院であるY病院を紹介することにしました。

 事情説明と何とか英語も喋れるフランス人ですと日本語で記載した情報提供書(紹介状)と、ネットで検索したY病院の地図を渡し、翌日午前中に受診するようにと指示し、患者を送り出しました。彼は、その指示をちゃんと守ってくれたようで、翌日の午後にY病院で診察してくれた医師からの、私からの情報提供書への返事がファックスで送られてきました。曰く、患者さんとのコミュニケーションも何とかとれ、出来るだけ希望に沿う方向で治療しますとありました。あれだけ嫌がっていた薬物療法ですが、やはり理学療法だけでは、改善は遅いので、鎮痛剤も同時に処方しましたと書かれていました。専門の整形外科医の説得には、彼も応じたのだろうと思います。

 Y病院の整形外科医の的確かつ迅速な対応に感激した私は、その日ファックスを読んだ直後に、Y病院に電話し、担当医師を呼び出してもらい、お礼を述べました。担当医は声からすると若い女性医師でした。恐らく、語学の観点から担当医に選ばれたのだと想像します。電話の会話もてきぱきしており、頼もしく感じました。最後に、以前の肩脱臼のフランス人患者のことにも言及し、機会があれば、整形外科医であるオーナー理事長兼院長のY先生にも宜しくお伝えくださいと言うと、はい分かりましたと明るく答えてくれました。

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木戸友幸
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