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54)Dr. Kidoは有名人?

 2014年の春のことです。午前の診療が終了した直後の午後1時頃、大阪市内のあるホテルから電話がありました。宿泊中のフランス人の旅行者が下肢に痛い発疹が出ているので、早く診て欲しいというのです。そのホテルマンの言うには、そのフランス人夫婦(夫が患者)は両方ともフランス語しかしゃべれないので、私と直接話して欲しいということでした。電話には妻が出ました。さっそく、例の「ゆっくり、簡単な語彙と構文のフランス語でしゃべってくれれば、あなたの言うことを理解できます。」と切り出すと、彼女は旅慣れていて外国人に対するフランス語に慣れているようで、分かり易いフランス語で、状況が詳細に把握できました。夕方の診察が始まる前の午後4時に来院してもらうことにしました。

 時間通りに木戸医院を訪れたのは、30代のフランス人夫婦と小学生の息子でした。患者の右のふくらはぎには、赤く腫れた吹き出物の周りにうっすらと赤い炎症の所見がありました。押すと痛いという圧痛の所見もあり、診断はセツ(ワードにこの漢字がありません。)に伴う蜂巣炎(蜂窩織炎)でした。抗生物質を一週間も服用すれば、治るはずです。予想外に短時間で問題が解決したので、後は四方山話になりました。まずどうして木戸医院を知ったのかを尋ねました。てっきり、日本に来てから、領事館のサイトを調べて知ったのだと思っていたのですが、答えは違っていました。彼らは日本旅行は今回が2回目で、前回からフランス人向けの日本旅行のためのサイトがあるのを知っていたのです。そのサイトでは、東京と関西で、フランス語がしゃべれる医師の住所、氏名が出ているそうなのです。また、利用者の経験談も掲載されているとのことでした。もちろん木戸医院の住所と私の名も載っており、私がこれまでここで診療した何人かのフランス人からの投稿も載っているそうです。評判を訊いてみると、上々とのことで、だから今回連絡したということでした。半分冗談で、今回の処方がうまく効いたら、Dr. Kidoは名医だったと投稿してねと言うと、真顔でそうするよと即答されました。

 ところで、患者はビジネスマンだそうで、英語はほとんど問題なくしゃべるのです。ホテルマンが夫婦共フランス語しか出来ないと言ったことと異なっています。彼が言うには、英語でも説明したが、そのホテルマンは英語もあまり理解できなかったということでした。しかし、ホテルマンの親身な対応には感謝しているようで、言葉が出来ないことを非難はしませんでした。

 彼らは、Paques(パック;復活祭)の休暇を利用して、日本旅行を楽しんでいるとのことでした。息子の学校も、その時期が春休みなのですが、旅行日程は学校の休みを少し超えるのです。でもフランスの小学校はその程度のことはまったく問題にしないのだそうです。
家族全員が日本ファンなので来年のPaquesにもまた日本に来るよと言って、上機嫌で医院を後にしました。

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木戸友幸
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