Dr.Kido History Home
E-mail

国際医療協力

ボタン Dr. 木戸流「異文化コミュニケーション」 ボタン

155)未必のマクベス

 2024年の7月に「未必のマクベス」早瀬耕、ハヤカワ文庫を読みました。この著書も早瀬耕という作者も、私はまったく知りませんでしたが、たまたま地元の書店に平積みで、それも縦横5列くらいの、とてつもない量で置いてあり、タイトルもミステリアスだったので思わず衝動買いしました。結果、大当たりでした。あるIT企業に勤める日本人男性、中井の数奇な人生が描かれています。彼は日本の大手IT企業に就職しますが、その企業は中国や東南アジア諸国でも営業を展開しており、彼もそれら各国で忙しく営業をしているのです。中井の高校時代のガールフレンドの鍋島もこの小説の重要な登場人物なのですが、彼女はお茶の水大学理学部数学科から大学院に進み、暗号理論の専門家なのです。

 ということで、この文庫本500ページの長編小説には、中国、東南アジアの最先端企業間の情報戦争(その中には殺し屋を雇った殺人も含まれる)や、そのための丁々発止の騙し合いの場面が満載です。私自身、米欧には生活経験もあり、異文化コミュニケーションには慣れているのですが、残念ながら近隣アジアでの生活経験がないので、メッチャ面白くて、500ページを通勤電車内のみでの読書3日で読み終えました。

 もう一つの興味深い偶然もありました。数年前ネット上で知り合った東京で産業医をしているK先生と2024年6月の浜松でのプライマリ・ケア連合学会での自身のシンポジウム発表(実際は座談会)の後、偶然、浜松駅前の居酒屋で再会する機会があったのです。その彼は日本最高峰の大学の理学部数学科を卒業し、卒業後、同じ大学の医学部を再受験し合格、内科勤務を経て産業医をしているという、なかなか特異な経歴の持ち主です。K先生、このブログを読んでいたら、今度「暗号理論」について、素人でも分かる解説をお願いします。

 最後に、この「未必のマクベス」という変わったタイトルです。マクベスはシェークスピアの有名な戯曲ですが、比喩とか暗喩とかではなく、そのものずばりのタイトルなのです。
主人公、中井がマカオのカジノを初めて訪れ、ビギナーズラックもあり大金を得た直後、知り合った娼婦(彼女は占いの特技を持つ)から、「あなたは、王として旅を続ける運命にある」と言われるのです。これ以上詳細に渡るとネタバレになるので、ぜひご一読を!

| BACK |

Top


木戸友幸
mail:kidot@momo.so-net.ne.jp