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152)オールドインペリアルバーでのひと時

 2024年4月中旬、東京で開催の内科学会総会に出席するため、金曜の午後5時に東京駅に到着しました。東京在住の次男のところに二晩泊めてもらうことになっており、その夜は次男と夕食を都心で食べる予定でした。彼に連絡すると8時にレストランを予約しているとのことでした。夕刻の2時間ほどを落ち着いて過ごせる場所で思い当たったのが、ホテルのバーでした。歳を重ねると、こういう知恵も付くものです。30代前半を過ごしたニューヨークでも、40代半ばのパリでも、そして大阪での開業医時代にも、夜の集まりの前の夕刻のひと時をホテルのバーで小一時間ぼんやり過ごしてリラックスするのを習慣としていました。

 少し考えた後に選んだ場所が帝国ホテルでした。世界中どこのホテルでも、バーは夕方5時ごろに開店します。帝国ホテル17階のオールドインペリアルバーに到着したのが6時15分前でした。6時からの開店だったようですが、若いパーテンダーが「どうぞ、どうぞ、すぐ準備しますので、カウンターにお座りください」と、その日の第1号客として丁重に迎えてくれました。(さすが帝国!)4月の6時の外はまだ明るく、窓から見える隣の皇居の外苑の桜はまだ十分残っていました。私が熱心に皇居方面を眺めているとパーテンダーが「あと1時間もすると灯りがついて雰囲気がまた変わりますから、ぜひごゆっくりしていってください」とタイムリーなコメント。私も気分上々で、フランスの食前酒の定番、キール・ロワイヤル(カシスリキュールにシャンパンを注いだカクテル)を注文しまた。

 すると、その日の客2号の私と同年輩風の白人男性が隣に座ってきました。訛りのある英語で「何を飲んでるんだい?」と尋ねてきたので、「キール・ロワイヤル」と答えると、どうもフランスのカクテルには疎いようで、レシピを説明してあげました。その後の会話から、彼はドイツ人のビジネスマンで、数日前から帝国ホテルに宿泊しているとのことでした。昨日の夕刻にもバーを訪れ、ドイツ版キール・ロワイヤルといった、ドイツのフルーツ・リキュールとシャンパンのカクテルを飲んだそうですが、その日のパーテンダーのスペシャル・レシピのものらしく、素晴らしかったと褒めました。そのことを、少し遅れて出勤してきたベテランのバーテンダーにも、彼は繰り返し説明しました。ベテラン・バーテンは一応「かしこまりました」と答えていましたが、私にこっそり日本語で「昨日の担当は、ちょっと凝り性で彼流のレシピを持っていて、その詳細は不明なんですよ」とウインクしてくれました。でも、出されたカクテルを「そうそう、これこれ」といった感じで、ドイツ人客は美味しそうに飲んでいました。

 以上、東京帝国ホテル「オールドインペリアルバー」でのリラックスしたひと時を報告しました。フランス語版では、この後の次男と夕食の模様を綴っています。

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木戸友幸
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