15)外国人対応施設リストに問題あり
1997年にフランスから帰国し大阪にある実家の木戸医院を継ぐことになりました。もちろん本業は地域の家庭医として診療することでした。しかし、これまでの体験を生かして、大阪での外国人診療にも何らかの貢献をしようと思いました。そこで、大阪市役所の外国人診療のできる医療機関リストに木戸医院を加えてもらうことにしました。対応言語はもちろん英語とフランス語です。
第一号の患者がほどなく木戸医院を受診しました。20代後半の英語教師をしているアメリカ人女性でした。腰痛を訴えて受診したのですが、いろいろ不満があるらしく、診察室の椅子に座ったとたん、機関銃のような早口でこれまでの経緯を喋り始めました。
市役所のリスト載っている英語対応の整形外科医院を受診したら、特に何の説明もないまま6〜7枚の腰椎のレントゲン写真を撮られ、その結果から椎間板ヘルニアの疑いありと言われ、鎮痛剤や胃薬など薬を山ほど処方され、診察料として1万円弱をとられたということでした。日本では、レントゲンを撮るのに説明も患者の同意も求めないのか、単純写真で椎間板ヘルニアは簡単に診断がつくのか、果てはアメリカの医療費に比べれば随分安いと思われる1万円の診察料まで高すぎるんじゃないかと言い出す始末です。
要するにその整形外科医院での診療のすべてが不満足だったので、うちにセカンド・オピニオンを求めに来たのです。確かに彼女の指摘はどれも私にも納得できることばかりだったので、理由を挙げてその旨を伝えました。診察から椎間板ヘルニアの可能性は低そうでした。私なりの処方をしましょうかと申し出ると、薬は山ほどあるから結構ということでした。診療には30分ほどの時間がかかりましたが、検査も処方もなかったので、料金は初診料の2700円だけでした。
その後も他院での診療が不満だったために、うちを受診する患者が何人か続きました。そしてそれらの訴えが、どれも患者より医療側に問題があるものばかりでした。そこで、これは市役所の作ったリストに問題があるのではと思うに至りました。リストの最初の作成時は、自己申請で医療機関を募るしかないでしょう。しかし、そのリストの質を本気で上げたいのなら、受診患者のアンケート調査くらいはして、その結果のフィードバックによって、登録機関の取捨選択をしないといけないのです。市役所にそこまでを要求するのは酷な話なのでしょうか?
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