145)黄金のパリ
1920年代のパリ、特に絵画の世界は世界中の無名の画家が集まり、談論風発し、時にはモデルの女性を交えての夜中のどんちゃん騒ぎもあったそうです。この時代に活躍した画家集団をエコール・ド・パリと言い、この時代の総称にもなっています。
その中で日本人の画家もいました。藤田嗣治です。私も好きな画家で、関西で展覧会があった時は何度も観に行ったことがあります。2022年夏に大阪のデパートで古本市が開かれており、たまたま訪れたところ、彼のパリ時代の思い出を綴った随筆集である「腕一本・巴里の横顔、講談社文芸文庫」を見つけました。その前年21年にオダギリ・ジョーが演じた映画FOUJITAを観ていたので、藤田のパリ時代は概ね知っているつもりだったのですが、映画は興行的な目的か彼のモデルとのどんちゃん騒ぎなどの奇行に重きを置いているように感じました。しかし、自身のエッセイでは若き日のピカソとの交際や、伝説のモデル、キキと知り合った経緯とかのエコール・ド・パリに憧れる私のような者からすると涎が出そうなエピソードが満載でした。
コロナ禍で夜の外出もなく、藤田の随筆から憧れのパリの1920年代の妄想に耽りながら幸せなひと時を楽しんでいた時に、何か同じようなことを描いた映画があったぞと思い出しました。ウッディ・アレンはパリを舞台にした映画を幾つも撮っていますが、ついこの間の2021年に観たMidnight in Parisがまさにこのエコール・ド・パリの時代を描いていたのです。それもウッディ流のちょっとオシャレでシュールなやり方で。
ハリウッドの人気脚本家、ギルが新しい仕事に悪戦苦闘している最中にひょんなことから婚約者とパリ旅行をすることになります。ある夜、彼がパーで飲み過ぎ、ホテルに帰るタクシーを待っていると、古めかしい車が現れ声を掛けられ、フラッと乗り込むと、着いた所が1920年代のパリだったのです。それから何度かパリの深夜、同じ場所からこの時空旅行を体験することになったのです。1920年当時のパリ在住の米国人女性の紹介でピカソやダリ、小説家のヘミングウェイとも会って談笑することができたのです。できれば、そこに藤田も入れて欲しかったなあ・・・。
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