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133)仁川今昔

 皆さん、仁川(韓国での発音はインチョン)はご存知ですか?韓国の北西にあり、ソウルの西40キロの港湾都市です。2023年2月11日の建国記念日の祭日の朝テレビのワイドショーを何となく観ていると、日本語の達者な韓国人女性が仁川の観光ガイドをしていました。高層ビルあり、自然公園ありで洒落たレストランもある魅力的な街でした。

 でもその時、私が思い出したのは1980年代初めのブルックリンでの黒人男性患者のことでした。その彼は1950年に勃発した朝鮮戦争に従軍した元米国軍人でした。何度かこの患者を私の外来で診察するようになったある日、彼が「ドクターは日本人だから仁川を知ってるだろう?」と尋ねられました。恥ずかしながら、彼が朝鮮戦争従軍者ということから推測し、韓国の何処かということくらいしか分かりませんでした。彼は序盤は圧倒的に劣勢だった朝鮮戦争において起死回生の作戦が、この仁川上陸作戦だったのだと説明してくれました。仁川港は小さく干満の水位差が大きく、多くの艦艇を率いた軍事作戦には向いていないと思われていたので、北朝鮮側も、国連軍というものの主体は日本進駐軍である米軍もこの作戦を支持していませんでした。しかし、マッカーサーは、圧倒的な北の奇襲に対するには奇襲で答えるしかないと仁川上陸作戦のゴーサインを出したのです。

 仁川のことなどずっと忘れていたのですが、このワイドショーを観た途端に40年前の話を思い出し、この上陸作戦についてもっと知りたくなりました。この作戦には名前が付いており、Operation Chromiteというのです。この作戦名をタイトルにした映画が作られていることも突き止め、動画サービスのアマゾンプライムで無料で観ることができたのです。祭日のことですから、午前10時から昼まで1時間50分かけてこの映画を鑑賞しました。北朝鮮に潜入していた韓国側の諜報員たちが主人公なのですが、多少のフィクションはあるとは思いますが、その大筋は歴史に忠実だっと思います。まさにノルマンディー上陸作戦並みの情報戦と電撃かつ大量兵力による作戦で、結果は上陸3日目にソウルを奪還できたのでした。

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木戸友幸
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