130)LVMH
さて今回のタイトルのLVMHとは何の略でしょうか?正解はLouis Vuitton Moet Hennessyです。Louis Vuittonは高級バッグ、Moet Hennessyはシャンペンやブランデーといった高級酒の会社です。これらは現在統合というか、買収されて同じ会社になっているのです。社名は二つの会社になっていますが、その他、クリスチャン・ディオールや、ティファニー等々も、この会社の一部になっています。要するに、フランスを中心として世界の富裕層御用達のブランド製品を作っていた会社を束ねた会社がLVMHなのです。この会社の業績は、信じられないほど素晴らしく、1980年代からそれこそ上昇の一途なのです。2020年からの世界中がコロナ禍の最中でさえ、全世界の超富裕層の「ストレス解消」のための購買の対象になり、売上を伸ばしているのです。
このLVMHを企画し築き上げた人物は、ベルナール・アルノーというフランス人です。彼は、1980年のフランス大統領選で、社会党のミッテランが当選した時に、フランスの資本主義は消えたと判断し、ニューヨークに渡り、当地で最先端の資本主義手法を学びました。そこで、思いついたのが母国フランスを中心とした世界的なブランド会社の買収だったのです。伝えられているエピソードがあります。彼がフランスでタクシーに乗り、庶民層である運転手にルイヴィトンやモエ・ヘネシーのことを尋ねると、知らない人は一人もいなかったということらしいです。何だか当たり前ですが、富裕層なら名前だけではなく、その質も知っており、購買する資金もあります。それらのブランドを全て一手にすれば、莫大な資産を手にすることができると判断し、その手段=買収の方法論を80年代にニューヨークで学んだということです。彼自身の資産も順調に増え続け、この10年ほどは世界の長者番付の10位以内に入っていたのですが、コロナ前までは、ビル・ゲイツ、ジェフ・ベソス、ウォーレン・バフェットなどの陰に隠れて目立たない存在でした。ところが2020年にアルノーが、長者番付の何と一位に輝いたのです。この時の彼の資産は、日本円換算で24兆円!でした。
彼の発想 ―質が良く歴史もあるブランド品はこれからも売れ続けるー は極めてヨーロッパ的でした。しかしそのビジネス手段の様々な会社買収法は、資本主義の本場のニューヨーク仕込みでした。頂点に上り詰めた現在の彼の経営スタイルはどうなのでしょうか?アルノーには5人の子供があるのですが、全員が彼の企業グループで働いているのです。その中から個々の業績を判断し、後継者を選ぶという、やはりヨーロッパ流のファミリー・ビジネスを着実に実行しているようです。
最後に興味深いエピソードを一つ。アルノーはアップルの創業者、故スティーブ・ジョブズと対談したことがあるのです。アルノーがジョブズに「30年後、i-phoneはまだ売れ続けているか?」と問うと、ジョブズは「分からない」と答えました。逆にジョブズが「30年後、ドンペリニョンはまだ飲み続けてられているか?」と問い、それに対しアルノーは「これからも永遠に飲み続けられる」と答えたそうです。
参考:日本経済新聞朝刊:2022年12月27日、米国流で高級品磨いた欧州富豪
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