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125)レモン;偉大なる脇役?

 日本でも、徳島のスダチや大分のカボスのような主役にはならないけれど料理の脇役として活躍する柑橘類があります。しかしグローバルには、何と言ってもレモンが最強の料理の脇役ではないでしょうか。今回はこのレモンを巡るいくつかのエピソードをお伝えします。

 私が卒業した医大の先輩で、米国留学を果たし、ハーバード大学系列の病院で臨床と研究を経験した秀才医師から聴いた話です。ハーバードには世界中から優秀な医師が留学しています。彼がそこで知り合ったフランス人医師は、フランス人らしくグルメを自負しており、何故かレモンにこだわったのだそうです。「レモンはやはり、地中海産のものでなくっちゃ料理が引き立たないんだよ。カリフォルニア産とかアリゾナ産のものでは、やっぱりイマイチだなあ。」というのが彼の持論でした。ある時、先輩がそのフランス人医師とボストンの小洒落たフレンチレストランで食事をする機会があったそうです。店の雰囲気も良く、料理も美味しかったのです。もちろん、レモンもサラダや魚料理のために付いて来ました。フランス人医師は気分を良くして、「ここのレモンは本当に美味しい。これはフランス直輸入に違いないな。コルシカ産かな?」と上機嫌でした。先輩はレモンがどこ産かなどということにまったく関心がなく、彼がそう言うのならそうなのだろうと思っていました。先輩がトイレに中座した時、廊下の片隅にレモンの入った木箱を目にしました。箱にはアメリカではどこでも見かける「サンキスト」の文字がありました。先輩が席に戻り、交代でフランス人医師がトイレに行きました。当然、彼もサンキストの木箱が目に入ったはずです。彼はテープルに戻ってきから一切レモンの話題を蒸し返さなかったそうです。

 アメリカの中古車店での会話です。店の主人が「うちではレモンは扱っていないので、安心してください。」中古車店で、柑橘類のレモンを扱ってないのは当たり前です。ここでのレモンは欠陥車のことを意味します。外から見て艶々した黄色のレモンでも、中身がどうかは分からないと言うことから来た言葉だそうです。実際、私が昔アメリカで中古車を買うときに、同僚の研修医から「レモンに気をつけろよ。」言われたことを覚えています。
 ブルックリンの病院のカフェテリアでも、レモンケーキ、レモネードなどレモン絡みの定番メニューはありました。やっぱり、レモンは偉大な脇役です。

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木戸友幸
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