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119)韓国ドラマと学歴偏重

 2020年が明けた頃から、コロナ禍のため夜の外出がほとんどなくなり、ネットフリックスにハマるようになりました。最初はハリウッド映画の古典(と言っても70年代、80年代のもの)やアメリカの連続ドラマを観ていたのですが、複数の知人に勧められて韓国ドラマを見始めると、これが中々の感動物でした。2022年の現在では話題に出すのが少し恥ずかしいほど有名になった「愛の不時着」を私は韓国の有料テレビ放映が終了した直後の2020年2月頃に、睡眠時間度外視で観ていました。それからも、ネトフリ鑑賞の3割がたは韓ドラで、2021年末までで20作品ほどは観たと思います。この現代韓ドラの社会的側面の一つを語りたいと思います。

 韓国の社会的格差と、それに伴う勝ち組になる必要条件である有名大学合格への受験戦争は日本でも韓国の大学入試時期になる度にニュース報道されています。これをそのままドキュメンタリー風にドラマにしてもあまり面白くないのですが、間接的にこの社会現象をドラマに取り込んで作られているものが意外に多いことが分かりました。もっと具体的に言うと、主人公が数学の天才であったり、韓国の東大(入試の困難さはそれ以上か)と言われるソウル大学、それも理系の出身であったりします。理系が採り上げられるというのは、韓国が貿易立国で、先端技術を使った製品を輸出することで成り立っていることに関係しているのでしょう。このことを示す私の観た中での4つの代表作を挙げてみます。

1)雪の女王
 このドラマは2006年に韓国の有料テレビで放映されたものです。この作品のみはネトフリではなく、アマゾンプライムです。主人公ハン・テウン(「愛の不時着」のリ隊長を演じたヒョンビンが演じています)は母親が屋台のうどん屋を営む貧しい家庭の息子ですが、学業成績が素晴らしく、ソウルの理系の秀才が集まる高校に合格します。高校時代に国際数学オリンピックがあり、彼はそれに優勝するのです。ところが、親友でもありライバルでもあった生徒もその大会に参加しており、優勝できなかったことを悔やみ自殺してしまうのです。テウンは、それを自分の責任と受け止め、大学進学を自ら諦め、ボクシングジムに入所するのです。もちろん、その後もこれでもかというくらいのジェットコースター的展開があるので、ぜひご覧あれ。アマゾンプラム会員でも、1話220円の課金(第1話のみ無料)があり、全16話です。

2)スタートアップ
 労働組合委員長を父に持つ中流家庭の一人息子のドサンは、幼少時から神童と言われ、小学生の時に国際数学コンクールに出場し、優勝するのです。理系の大学を卒業後、同級生2人と共にスマホアプリを製作するベンチャー企業を立ちあげるのですが、あいにく仲々芽が出ませんでした。そこで、スタートアップ企業を援助する組織の大会に参加したのです。ドサンがひょんな事から好きになる女性は、高卒ですが地頭がよく、この大会で上位入選し、ドサン達と一緒にスタートアップ企業を立ち上げます。しかし、そのひょんな事で二人は疎遠になってしまいます。その後は観てのお楽しみです。

3)海街チャチャチャ
 ソウルから車で数時間の海辺の地方都市で、街の便利屋として人気者のドゥシクは、実はソウル大学工学部を首席で卒業した秀才なのです。何故、この秀才が生まれ故郷の地方都市で便利屋をしているかを、恋仲になるソウルの歯科医院の雇われ医師を辞め、この街で開業することになった女性歯科医が徐々に知っていくという話です。この ドゥシクを演じたのは、キム・ソンホという俳優で、「スタートアップ」でドサンらを色々援助する人物として重要な脇役を演じています。

4)賢い医師生活
 ソウル大学医学部卒の音楽好きの5人の同級生が、ソウルの高級私立病院で各人それぞれの専門科で優秀な医師として活躍しながら、趣味としてバンド活動もしていく話。その中の一人は、その私立病院の理事長の息子なのですが、本人は小児外科医よりキリスト教の神父になりたかったという聖人のようなナイスガイなのです。タイトルにあるように、これ以上に賢い医師生活はないと、私自身、医師として感じた次第ですが、40数年間医師を続けてきた私としては、彼ら(一人は女性)の医師としての生活スタイルは理想的(=羨まし)過ぎます! 私の医師仲間に、在日韓国人でソウル大学医学部卒業の医師がいます。以前からソウル大学医学部入学の難関さは噂に聞いていたのでそのことを彼に尋ねると、彼は「外国人枠があり、そこはそれほどでもないのですよ」と謙遜するナイスガイでした。

連ドラっていいですねえ。

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木戸友幸
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