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113)江坂の思い出

 大阪市の北東部に隣接し吹田市があります。国立循環病研究センターや大阪大学医学部付属病院が立地する医療施設に恵まれた市なのですが、今回の話はそのこととは関係ありません。吹田市の南端に位置する江坂にまつわる思い出です。

 この異文化ブログではフランス関係のことを色々書いてきました。その原点がこの江坂にあるのです。1973年、私が医学部の3年生の時のことです。この江坂に大阪日仏学院というフランス政府が後援するフランス学校が開校したのです。関西ではこの種のフランス語学校は京都日仏学館(私の父も旧制高校時代に1日だけ授業を受けたそうです)が昔からあったのですが、大阪では初めてのことだったのです。その頃の私はNHKのラジオ講座でフランス語の基礎を学び初めていたくらいで、フランス語はまったくの初学者でした。ですから当時、フランス語にかなりの興味を持ち始めていた私には、この大阪日仏学院の開校は非常に大きな魅力の対象でした。私は当時、大阪医大に実家から通っていましたが、その実家は大阪市東淀川区の北東端にあり、江坂は吹田市の南端です。実家から試しに車で江坂まで走ってみるとほんの15分ほどでした。喜び勇んで、大阪日仏のもっとも初級クラスのA1(アーアン)に入学登録をしました。
江坂は現在は、商業ビルが立ち並ぶ、ちょっとしたビジネス都市の外観なのですが、当時は地下鉄御堂筋線江坂駅の周りにいくつかのビルが立ち並んでいる程度で、まだ田んぼもたくさん残っていました。ビルのそばの田んぼ横に路上駐車しても平気でした。学校は江坂駅から直接の連絡路があるD生命ビルの高層階にありました。そのビルは当時(今でもかな)は非常に斬新なデザインのビルで、一階から3階までが吹き抜けで、そのスペースにはオフィスや店舗はなく、全面ガラス張りの巨大な温室植物園だったのです。外観は黒い色調で落ち着いており、入り口を抜けると巨大植物園ということで、当時かなりの話題になりました。

巨大な温室植物園

 さて、それからほぼ半世紀たった2020年の春に、江坂に本社がある某企業の嘱託産業医を務めるようになったのです。月に一度の勤務なのですが、地下鉄御堂筋線の江坂に着くと、半世紀前のフランス語を始めたときのことを思い出し、少し甘酢っぱい感覚に襲われます。2021年の3月に少し早めに江坂駅に到着した日に、D生命ビルを訪ねてみました。すると、昔の巨大植物園は現在も健在でした。その一画に喫茶店が出来ていたのもちょっとしたご愛嬌でした。

 しかし、肝心のフランス語学校はもう存在はしていないのです。私がまだ大阪日仏に通っていた1976年にフランス人講師のストという何ともフランスらしい理由で閉鎖されてしまったのです。 その後、スト派フランス人講師が大阪市内で自主授業を開始し、その努力がフランス政府にも認められ、やはり政府公認のアリアンス・フランセーズ大阪となりました。このアリアンスにもパリで開業する前の1994年に1年ほど通いました。現在は、名称はアンスティテュ・フランセと変わっていますが、大阪での開業を辞めた2016年より現在の2021年まで週1で通い続けています。と言ってもこの1年間は新型コロナのためリモート授業ですが。

 というわけで、今回は私のフランス語人生の原点である、江坂をご紹介しました。

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木戸友幸
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