家庭医木戸の現場報告(11)
(JECCS News Letter 2019年4月号掲載)
天命巡りくる!
ジェックス参与 木戸友幸
私は、これまでの医師人生40数年間の恐らく1割ほど、その精力を外国人診療に捧げてきたように思います。この話題に関しては、当ニュースレターでも皆さんに折に触れてお伝えしてきました。当連載では、現場報告(4)2016年10月号で1983年から国立大阪病院で開始した外国人外来について、特別寄稿として執筆した「国際都市オーサカの夜;2012年4月号」では欧州某航空会社顧問医として感じた大阪の外国人診療の不備についてを書きました。
そこで、今回は満を持しての、この話題での第3弾です。第3弾を書こうと思い立ったきっかけは2025年に開催が決定された大阪・関西万博です。それでなくてもインパウンド外国人旅行者の思いがけない急増で戸惑う大阪に、半年間開催の超長丁場の万博が7年後にやってくるのです。そしてそのテーマが「いのち輝く未来社会のデザイン」で、そのまたメインテーマが健康、医療というではありませんか。万博ですから、もちろん医療関連で展示されるのは日本の誇る最先端の医療技術や医療機器になるのだろうと思います。しかし世界各国から訪れる人達は基本的に健康な人達で、彼/彼女らに医療が必要になる場合は、それに対応する医療は総合診療(プライマリ・ケア)になるはずです。その準備体制は今の所、残念ながら大阪ではまったく進んでいないと思われます。私は冒頭で述べたように、この40数年間、自ら外国人診療に携わりながら、日本の各都市の医療体制も観察してきました。私なりの情報と調査によりますと、曲がりなりにも、ある程度の外国人に対する総合診療体制が出来ているのは、日本では東京のみであることが判明しました。実は私、30年ほど前に、東京広尾にある老舗の外国人相手の診療所にリクルートされかけたことがあるのです。その時、そのクリニックの経営状況も尋ねてみたのですが、当時経営はトントンに過ぎず、競争相手も徐々に出現しつつあり、診療可能な日本人医師は極端に少ないということで、将来のクリニック経営持続のために力を貸して欲しいということでした。確かに、その後、東京の外国人相手の診療所は質、量共に一段と改善されてきています。しかし、その東京でさえ2020年のオリンピックを控えて、選手や訪問外国人に対する医療体制の整備問題では頭を抱えているのです。
そこで、この回のタイトルに挙げた「天命」の登場です。万博と、それ以後の大阪の更なる国際化に伴う医療体制の設計の手助けをすることが、私の医師人生後半の天命なのだと悟ったのです。実はこれもこの20年間ほど内外の日本の国際化の問題点に関する情報を収集した結果、分かったことなのですが、日本が必要とする若手の先進国の優秀な人材が、日本で一番必要とする生活インフラは、子弟の教育インフラ(英語を中心とした国際学校)と家族全員の医療インフラ(少なくとも英語が通じる医療機関)だったのです。
大阪市も府も、今のところ(というか、これからしばらくも)万博そのものの設計とその交通インフラの整備で手一杯で、訪問外国人に対する一般医療の体制など、とても手が回らない状態だと思います。やはり、ここは医療全般に目を配る機関である大阪府医師会に頑張っていただかないといけないのではないでしょうか。幸い、府医師会長を始めとして、府医師会幹部はすべて私と同年輩の方々で、その大半と個人的な面識があります。また、我がJECCSに直接関わっておられたドクターも幹部の中に、それも複数でおられます。このニュースレターを読まれて、趣旨に賛同いただけたなら、ぜひご連絡ください。この私、木戸友幸がぜひご協力したいと思っています。