L'ETE
1975(3)
3)振られ初め
到着から授業の開始までに数日のタイムラグがあったように思います。
そのある日の出来事です。学食で食事をした後その辺りをぶらついていると、目の覚めるようなラテン系の美女がいるではありませんか。吸い寄せられるようにその女性に近寄り、フランス語で挨拶し、そのまま会話を続けようと話し続けましたが、彼女からの返事はほとんどありません。ひょっとするとフランス語がほとんど出来ないのか、あるいは、私を避けたかっただけなのかも知れません。
そうこうしていると、向こうから、やはりラテン系のいかつい褐色の顔をしたあばた面の男が近付いてきて、彼女を連れて学食に入って行きました。よせばいいのに私は、その二人を追って学食に戻り、彼女の隣に席をとり、さっきの会話の続きを試みたのです。さすがに男は気を悪くしたようで、私が二言三言しゃべるかしゃべらないかの間に口を挟んできました。
当然です。エル・ヌ・パルル・パ・フランセ(彼女はフランス語ができない。)エル・ヴ・デテスト(彼女はあんたを嫌っている。)とこれまたストレートに宣言されてしまいました。この美女とは残念ながら、その後も何の絡みも生じませんでしたが、その連れのいかついあばた面の男とはかなりの繋がりが出来るようになります。
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