L'ETE
1975(24)
24)パリでの奇跡
グルノーブルでの夏期講習を終えた私は、その足で3週間のギリシャ旅行を楽しみました。アテネやクレタ島などを巡りました。帰国便はパリからだったので、最後はパリで1週間を過ごす予定でした。
パリでも夏休みの間は学生寮として使用されているアパートが一般に安く解放されていたので、その一つの学生街であるカルチエ・ラタンにあるアパートを訪ねました。幸い空き部屋があり、1週間の賃貸契約を交わしました。メトロの駅から5分で、アパートのすぐ横にスーパーがあるという本当に便利なところでした。
この安くて便利なアパートを基地にしてメトロを乗り継いで、数日間パリ探検を楽しみました。そろそろ帰国時の空港への足のことなども考えておかないといけない時期でした。ある日、アンバリッドのパスターミナルを訪ねようと思い立ちました。当時は、空港へのパスはすべてこのアンバリッドから出ていたので、ここに行けばさまざまな情報を得ることが出来たのです。空港へのバスの時刻表をメモしていると、後ろから女性の声でトモユキというのが聞こえました。振り向くと何とあのマリアがスーツケースを持った旅姿で立っているではありませんか。
私がグルノーブルを去る時、彼女はあと一か月夏期講習を受けてからパリに行くと言っていました。その間私はギリシャ旅行をしていたので、この時期、パリに両者が同時期に存在することは計算上理解していました。しかし、彼女のパリ到着のその日にアンバリッドのバスターミナルで遭遇するとはまさか思いも及びませんでした。
彼女が受けた2か月目の講習の教師はミリエルから他の人に替わったとのことでした。彼女はその新しい教師をべた褒めし、ミリエルより断然いい教え方でよかったと言ってました。それから、彼女の2か月目のグルノーブルでの話題、私のギリシャでの話題を立ち話していましたが、最後に彼女が言いました。「私、パリへはグルノーブルで知り合ったアメリカ人と来てるの。デイヴィッドというんだけど、彼はまだ宿が決まってないの。トモユキが泊まっている学生寮アパートに空きはないの?情報を彼に知らせてあげて。」あまり聴きたくない種類の知らせでしたが、お嬢様のマリアはちゃんとしたホテルを予約してあるそうなので、ただの旅の連れと割り切り、デイヴィッドへの連絡は承知しました。夕方に彼女のホテルに連絡を入れることを約束して、その場は別れました。
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