L'ETE
1975(21)
21)カナダ人医師に抱いた憧れ
夏期講習中にあったパーティーの席で、カナダから来た医師と会話をする機会がありました。彼はフィリピン人で、フィリピンの医学校を卒業の後、カナダに渡り研修を受け、当時はリハビリテーション医学の専門医として活躍しているとのことでした。40代のナイスミドルといった風貌で、身なりも嫌みじゃない程度に金をかけたもので、私の目からみても好ましい印象でした。
当時、フィリピンでは自国の経済状況が悪いので、医学生のかなりの部分がアメリカやカナダなどの北米の英語国に卒後の研修を受けるために国を離れたのです。日本では、卒後研修を海外で受けても大部分が帰国しますが、フィリピン人は、その逆で、大部分が研修国に残り、そこで医師として生活します。その彼も、カナダで国籍をとり、カナダ人医師として生活していました。フィリピンで高等教育を受ける人は、すべて講義は英語が基本になっているので、彼等にとって英語は、ほとんど母国語みたいなものなのです。ですから英語国での生活はまったく不自由はないのです。
カナダは、英語とフランス語の両方が公用語になっており、その両方ができると、いろんな面でメリットがあるのです。その彼も中年にさしかかり管理職的な仕事も増えてきており、フランス語の基礎を必要としていたのです。そこでグルノーブルでのフランス語夏期講習に参加したということです。
彼のリラックスした話し振り(もちろん英語)や、余裕のありそうな身なりにちょっとした羨望を覚えました。彼と話しした後、英語国で卒後研修を受け、フランス語も趣味とて続けるのも悪くないかなと思うようになりました。
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