L'ETE
1975(19)
19)英語のやたらうまい日本人
日本人とはあまり付き合いはなかったものの、印象に残った人は何人かはいます。マサトくんはそのうちの一人です。彼とは、まだグルノーブルに到着してすぐの授業が始まる前に偶然に知り合って、その後何度か話をしたことがありました。数回しか会ったことはなかったのですが、そのいずれの時も、マサトくんは英語国の人と英語で話していました。その英語がまた流暢なのです。私も、医学生時代、フランス語と共に英語の勉強もかなり熱心にしていたので、マサトくんといる時は、一緒にいた英語国の人にも合わせて英語でしゃべるようにしたくらいです。
英語国からの帰国子女かと訊くと、そうじゃなくて、日本の外大で学びながら自分で勉強しているんだということでした。今回は、シベリア鉄道を乗り継いでヨーロッパまで来たそうです。シベリア鉄道にも英語国の人々がたくさん乗っていて、英語の勉強の機会はいくらでもあったとのことでした。マサトくんに言わせると、語学の勉強なんて留学しなくてもやり方次第でいくらでも上達するのだそうです。そう豪語した後、彼は私にこっそり日本語で訊きました。「ひょっとしてトモユキさんのフランス語のクラスって、かなり上の方のクラスじゃないの?」
彼のクラスは他の日本人同様まったくの初級クラスだったのです。グルノーブルでの滞在期間中、彼が誰かとフランス語でしゃべっているのを目撃したことはなかったので、彼にはフランス語はあまり合ってなかったのかもしれません。
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