ブルックリンこぼれ話(44)
診察台の寝心地
1年目の終わり頃の、在郷軍人病院兼務のときの話です。
内科病棟は11階にあり、そこの病棟が本拠地だったのです。
当直のときもその11階から呼びだしを受けるのですが、仮眠のとれる当直室は1階にあります。一晩のうちに5〜6回の呼びだしがあるのが普通なのですが、その度に1階と11階を往復していると、エレベーターでの往復時間分だけ睡眠時間が減ることになります。
そこで、少しでも睡眠を確保するために我々研修医が考え出したアイデアは、11階の診察室の診察台で仮眠をとることだったのです。アメリカの診察台は、日本のものよりかなり高さが高いのです。もちろん枠はありません。下は固いリノリウムの床です。2ヶ月間の勤務の間に20回ほどこの診察台で寝ることがありましたが、一度も床に落ちたことはありませんでした。
その特技は今でも生きています。自宅でビールを飲んだあとリビングのテレビの前でうとうとしてしまうことがありますが、そいういうとき、たいていはカーペットの上で朝まで寝てしまいます。妻からは、よくあんなところで朝まで寝れるわねと言われますが、墜落の危険を伴う診察台で20回の睡眠体験のある僕としては、自宅のカーペッ
トの上での睡眠は極楽のようなものです。
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