ブルックリンこぼれ話(43)
Espionageの舞台
Espionageとは、平たく言うとスパイのことです。この分野は小説の世界でも昔から非常にベストセラーを生みやすい分野です。80年代前半の僕のニューヨーク時代には、アメリカにはロバート・ラドラムという巨匠がいました。一年上のレジデントのオルリーがラドラムのファンで僕も勧めらるままに読むとその虜になってしまいました。
ラドラムは、ニューヨーク出身の作家なので、自ずとニューヨークが彼の作品の舞台になることが多いのです。「48丁目とマディソン街の角の洒落たオフィスビルに男は姿を消した。」などという描写があると、その場所の雰囲気(しゃれたブティックな
どがあるシックで落ち着いた地域)がニューヨーカーだとちゃんと分かるのです。ニ ューヨーカーにとっては、そういうラドラムの楽しみ方もあります。
NY出身のラドラムに限らず、スパイ小説の舞台としてはニューヨークが使われることが圧倒的に多いようです。マンハッタンだけではなく、例えばこの「こぼれ話(11)
」にも書いたように、ブルックリンにあるブライントン・ビーチなども、しばしば舞台になります。ここは、ロシアン・マフィアのアメリカにおける拠点なのです。別名
リトル・オデッサ(同好の士なら、フォーサイスの「オデッサ・ファイル」をすぐ思い出すでしょう。)と呼ばれています。
ヨーロッパでは、やはりパリが一番よく舞台に使われます。ということは、僕の海外生活(ニューヨークに3年、パリに2年半)はまるで、スパイ小説の舞台巡りをしてい
るかのようです。アジアでは、国際都市香港が多く、時々北京、東京なども使われます。でもアジアはまだまだマイナーな扱いのようです。
ブルックリンの州立大学病院のさる女性秘書で、自分の夫を自慢するので有名な人がいました。彼女の夫自慢の最大の売りは、彼がロシア語とポーランド語を流ちょうにしゃべれるということでした。影で皆が噂していたのは、彼女の夫はCIA勤めに違いないということでした。ニューヨークはそれほどEspionageが似合っている街なのです。
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