ブルックリンこぼれ話(33)
マンハッタンのピアノ・バー
マンハッタンのアパートに越してきてから、よく行くようになったのが、以前にご紹介したジャズ・クラブですが、もう一つがピアノ・パーです。
ピアノ・パーは、日本でもカラオケを置かずにピアノの伴奏で、店の専属歌手が歌ったり、客が歌ったりしている酒場がありますが、そういう酒場のことです。
その当時、ピアノ・パーはマンハッタンの中に5〜6軒ほどあり、ほとんどすべてが日本人がオーナーで、客もほとんどが日本人でした。しかし、ホステスは当時ほとんどアメリカ人女性でした。(最近はパイトの日本人女性がほとんどらしいです。)それらアメリカ人ホステスの多くは、プロードウェイを目指して、オーディションを受け続けてている歌手やダンサーの卵、というよりセミプロなのです。ですから、ちょっとなじみになって、リクエストが出来るようになると、本当に素晴らしい歌唱力で、スタンダード・ナンバーを歌ってくれました。
もう一つの楽しみは彼女らとの会話です。彼女らの日本語は、挨拶程度なので、当然英語で会話します。酒場の会話というのは、かなり下ネタも入るのが当然ですが、そういう普段、僕たちが耳にしない、下ネタ表現を彼女らがふんだんに教えてくれました。ちょっとこういう所には具体例は書けませんが、僕がたかだか3年間の滞米体験の割に、米語のスラング(特に下ネタ系の)を比較的多く知っているのは、このピア
ノ・バーのお姉さん連中の指導のお陰です。ヴィレッジ界隈でのジャズクラブの師匠H先生とも一緒にピアノ・バーに行きましたが、彼は英語が上手で、特に下ネタ系の語彙は僕よりよほど豊富でした。
ニューヨーク駐在の日本人ビジネスマンは、ほとんどこの手のピアノ・バーの常連だったようです。というのは、その後、パリで医業をしていたときの患者に何人かニュー
ヨーク駐在の経験のある人がいて、この話題で話がはずみました。また、最近では、高校の同窓生で同時期にニューヨークに住んでいた者が少なくとも3人おり、彼らも
ピアノ・バーの常連だったことが分かりました。ひょっとしたら、どこかで偶然会っていたのかも知れません。
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