ブルックリンこぼれ話(8) 
眠い!
レジデントをしていた3年間にわたり、もっとも辛かったことの一つは慢性の睡眠不足でした。何しろ最初の1年目は3日に1度の当直で、それも当直明けは普通の勤務ですから、3日に一度連続32時間労働があるということになります。
小児科病棟で研修を受けていたときのエピソードです。ある当直の日の深夜のことです。救急の入院患者の母親から病歴をとっているときに、猛烈に眠気が襲ってきて、文字通り5分置きに意識が遠のき、船漕ぎ状態になるのです。この時は、もうどうしようもなかったので、患者の母親に正直に話して、30分間仮眠をとらせてもらい、事無きを得ました。
マンハッタンのアパートに住むようになってからは、マンハッタンと病院のあるブルックリンを車で往復していました。車通勤途中の眠気覚ましのエピソードを紹介します。当直空けの夕刻、ブルックリンからアパートのあるマンハッタンへ車で帰る時のことです。眠くて眠くて、10分に一度くらいウトウトして車が隣の車線に入りそうになってしまうのです。眠らないために大声で歌を歌うのですが、まともに最後まで歌える
歌がなく、仕方なく、いつも歌ってたのが、「ソーラをコーエテー・・・」の鉄腕アトムの主題歌だったのです。
アトムを歌い続けて1年ほどたった時、アパートに小包が届きました。それは、桑田佳祐の「愛しのエリー」が入ったカセットでした。そう、アメリカに来るまで、大阪で付き合っていたエリちゃんが送ってくれたプレゼントです。その日から、車の中で
の眠気冷ましは鉄腕アトムの他に「愛しのエリー」をフルボリュームでかけるという のが新しい習慣になったのは言うまでもありません。
大阪の酒場で「鉄腕アトム」か「愛しのエリー」を口ずさみながら、涙している中年男を見たら、それは僕です。(ちなみにエリちゃんは現在の妻ではありません・・・)
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